このページをご覧になっている方は、取引先に「食品規格書」(「仕様書」「カルテ」)の提出を求められている方かと思います。
食品の信頼性を高め、営業ツールにもなる「食品規格書」とは何か。そして、作り方も合わせて紹介していきたいと思います。
先生!これ食品表示ラベルの作り方のところでも出てきたやつですね。
うむ、規格書なしに食品を製造すると、違法となってしまうことが多いのじゃ。
ほえー、かなり大事な書類なんですね。
提出しない会社は、商取引を断られることも多々あるので、しっかりと用意しよう!
食品規格書(仕様書・カルテ)とは?
カンタンに言うと食品の「商品情報がまとまったシート」のことです。
企業によっては、単に「規格書」と言ったり、「カルテ」「仕様書」と呼ぶこともあります。ここでは、便宜上「食品規格書」と呼びたいと思います。
筆者自身もいままでに数千枚ほど食品規格書を見てきましたが、フォーマットや記載項目も企業によってバラバラで、業界内でもまだまだ統一が進んでいない状態です。
とは言え、ある程度の項目は共通しています。
実際の食品規格書のサンプルと、よく見られる項目をリストアップしてみたので、参考にしてみてください。
食品規格書のサンプル
食品規格書は近年統一化に向けての動きが進んでおり、「SSSP/2014」や「PITS(ピッツ)」と呼ばれる形式が一般的になりつつあります。
よくお世話になっているツールで、無料でこれらに対応した規格書が作れるので、参考として作ってみました。
今回作ったサンプルは、コチラからダウンロードすることができます。
ほぼすべての規格書にある大項目
- 基本情報(正式商品名、写真など)
- 原材料・添加物の内訳(アレルゲンなど)
- 栄養成分
- 各種規格(重量、細菌の数値など)
規格書によってあったりなかったりする大項目
- 一括表示(食品表示ラベルの内容)
- 包材情報(外装画像、素材など)
- 製造情報(工程など)
それぞれの項目については、後ほど作り方を説明する際に、詳しく見ていきたいと思います。
規格書の作り方
それでは、先ほどのサンプルを見ながら、細かく規格書の作り方を見ていきましょう。
必須の項目には【必須】を、あった方がいいものには【推奨】という文字を入れておきました。
また、特定の食品のみ必須となる項目には【特定】と書いておきました。
項目数がめちゃくちゃ多いので、大項目ごとにリストを区切っていきます。
規格書を作る作業は、大変なので無料で使える便利なサービスなどを利用することをオススメします。
基本情報
まず、サンプルの1枚目の赤枠部分をみてください。
食品規格書の最重要項目といってもいいかもしれません。
商品の正式な商品名やメーカー名、荷姿規格などを書きます。
- 正式商品名
- 正式商品名(フリガナ)
- 商品画像
- メーカー名
- メーカー名(フリガナ)
- ブランド名
- メーカープライベートコード
- メーカー独自の管理コードの意味です。
- PB / NB 分類
- PB(プライベートブランド:販売と製造が分かれている商品のこと)
- NB(ナショナルブランド:メーカーの自社製品のこと)
- JANコード
- ITFコード
- 荷姿規格
- 例:1kg × 12本
- 商品サイズ
- 賞味・消費期限
- 保存温度帯
- 商品アピール文
- 召し上がり方・使用方法
- 使用・保管・廃棄上の注意
- 酒類区分
- 酒類コード一覧表(リンク先「申請書様式・記載要領」の記載要領を参照)から選択
- 酒類アルコール分
企業情報
こちらについても、サンプルの1枚目の赤枠部分をご覧ください。
本来であれば、一括表示(食品表示ラベルの内容)と被る内容ですが、規格書ではこの部分を切り分けて書くことが多々あります。
- 販売者
- 販売者住所
- 販売者電話番号
- 製造者
- 製造者住所
- 製造者電話番号
- 加工者
- 加工者住所
- 加工者電話番号
- 輸入者
- 輸入者住所
- 輸入者電話番号
原材料情報(配合表)
こちらについては、サンプルの2枚目の赤枠部分をご覧ください。
食品が、取引先で食材として使われる場合は、「原材料・添加物ごと」に以下の要素が必要となります。
理由としては、卸(おろし)た先が食品表示を作成する際の根拠資料となるからです。これは、保健所の立ち入り調査などで確認が行われます。
「レシピだから社外秘にしたい!」は通じません。食品表示の違法は、最大で法人の場合は1億円以下、個人の場合だと200万円以下の重大な罰則があり、卸(おろし)た先に、その罪を背負わせることになります。
また、あなたの会社も違法幇助になる場合があるので、しっかりと公開しましょう。(弁護士などの確認もとってみましょう。)
ただ、取引のない企業にまでは公開する必要はありません。
- 原材料名・添加物名(添加物は法律で表記が固定)
- 配合率(%)
- 用途(添加物の場合のみ、法律で表記が固定)
- 一括表示(食品表示ラベル)の記載有無
- 一括表示記載名
- 産地・製造地
- 製造者名
- 仕入元
- 基原原料(主原料)
- 例:小麦
- 基原原料(主原料)の産地
- アレルギー物質
- アレルギー物質(食品表示ラベルの表示有無)
- 遺伝子組換え対象農作物
- 遺伝子組換え(一般的に「組換」とも)
- 遺伝子組み換え(一般的に「非組換」とも)
- BSE関連情報
添加物は法律で表記が固定されていますが、◯◯で確認することができます。
最初から、選択肢が決められてる便利なツールもあるので、面倒な場合はそちらを使ってみても良いでしょう。
食品表示を作りたくて、メーカーに配合表を求めたら「公開できない」と言われました。
卸先を違法にしないためにも、ちゃんと載せるようにするのじゃ。今の時代、レシピを公開したくらいで真似されるなら、その程度の商品ということじゃ。
一括表示(食品表示ラベル内容)情報
こちらは、サンプルの1枚目の赤枠部分をご覧ください。
商品の食品表示ラベルの内容のことを「一括表示」と言います。
食品にシールや印字している一括表示は、法的な規制がルールがたくさんあり、違反すると非常に重い罰則(最大で法人なら1億円以下、個人なら200万円以下)が存在します。
具体的には、以下の法律(合1,200ページ以上)を把握する必要がありますが、こういったサービスを使うと簡単に適法性の高い表示を作ることができます。
食品規格書は、消費者向けではなく、あくまでも事業者向けとなり、本来であれば一括表示の規制対象外となります。
そのため、基本情報や企業情報など、情報が被っているところがあると多少は省略されて書かれる傾向があります。
一般的に記載される一括表示の項目をリストアップします。
- 名称・品名・種類別・種類別名称
- 原材料名
- 内容量・固形量・内容総量
- 原産国・原料原産地名
- 使用上の注意
- 調理方法
- 使用方法
- 殺菌方法
- 凍結前加熱の有無
- 加熱調理の必要性
- でん粉含有量
- 無脂乳固形分
- 乳脂肪分
- 賞味・消費期限
- その他表示
栄養成分表示
こちらは、サンプルの1枚目、4枚目の赤枠部分をご覧ください。
基本5項目と呼ばれる以下の栄養成分は、2020年4月1日から一括表示と一緒に表示する義務があります。
そのため、食品規格書でも必須レベルで掲載が求められます。
- 熱量
- 脂質
- たんぱく質
- 炭水化物
- 食塩相当量
また食品表示ではあまり見られませんが、規格書によっては以下を掲載することも多々見られます。
- 水分
- 灰分
- 糖質
この他にも、ビタミン類・ミネラル類含めて30種類ほどありますが、すべてを記載している規格書は、ほぼありません。恐らく大手の取引でしか求められないでしょう。
上記にない栄養素を取引先から求められた場合には、検査会社や計算式から算出する必要があります。
包材情報
こちらは、サンプルの3枚目の赤枠部分をご覧ください。
包材に関連する情報です。食品規格書で最も内容が薄い部分かもしれません。
以下の表示がない食品規格書も多々存在します。
- 商品画像(外装)
- 包材の部位と材質
- 識別・認証マーク
- 遺伝子組換えの表示有無
- 原料原産地の表示有無
- アレルギー物質の混入(コンタミネーション)の表示有無
製造情報
こちらも、サンプルの3枚目の赤枠部分をご覧ください。
最後に製造情報です。
下記のうち「1. 製造工程」「7. コンタミネーション」「9. 物理・科学・微生物規格」については、「推奨」としていますが、ある程度の企業規模になってくると「必須」に近いと考えてもらっていいと思います。
貴社が小規模であっても、こういったところをしっかりと記載していると取引先は「しっかりした会社だ」という印象がかなり出ると思います。
- 製造工程
- 工程名
- 管理項目
- 管理基準
- 監視測定方法
- 検証方法
- 金属探知機の使用
- 有無
- Fe(鉄)の数値基準
- SUS(ステンレス)の数値基準
- ウェイトチェッカー
- 下限
- 上限
- その他の異物検出方法
- 包装前後の最終殺菌方法
- 冷却方法
- 衛生監視表
- コンタミネーション
- 同一工場内に存在するアレルギー物質
- 製造ラインに購入する恐れのあるアレルギー物質
- コンタミネーションの防止策
- 物理・科学・微生物規格
- ヒ素(As2O3として)
- カドミウム(Cd)
- 一般生菌数
- 大腸菌群
- などなど
- 品質保持方法
最後に
いかがだったでしょうか。「こんな面倒なことをしないといけないの?」とか「レシピを出さないといけないの?」と思う方も多いと思います。
しかし、すでにこれらは食品製造業では「常識」となっており、会社としてのレベルを見る一つの基準になっています。
しっかりと食品規格書を用意し、いつでも大手と取引できる環境を揃えておけば、経営的なチャンスも逃さないでしょう。